(中編)

 

 

■青字…2007年の訪問 ■赤字…2008年の訪問

橋を渡ると、遊歩道は一気に河原に下りる。

河原といっても広い砂利の河原ではなく、あるのはゴツゴツとした大岩ばかりだ。

今日は、行楽シーズンの休日ともあって、ハイカーたちが沢山いた。

私がこうして写真を撮るあいだも、次から次へと私の後ろを通り過ぎていった。

 

鳩ノ巣小橋は、実に見事な吊り橋である。

渓谷の景色に、とても良いアクセントをつけていた。

 

遊歩道はなお、岩だらけの険しい渓谷をゆく。

所々に写真のような階段があったり、桟道があったりと、進んでいて飽きない道である。

ただ、道はしっかりと整備されているので、川にドボンということは無い。

川の水は青く澄んでいて、深いところではゆったりと、浅いところでは激しく流れていた。

夏の暑い時期は、思わず入ってしまいたくなるに違いない。カヌーとかも面白いであろう。

 

耳を澄ませば、そこにあるのは川の流れる音と、鳥の囀りだけであった。

多摩川よ、いよいよここまで来たか…。

 

沢山のハイカーの列に私も加わって、遊歩道を進んでいく。

こうして見ると、本当に岩だらけである。自然の造形美を感じてしまう。

そして、こんな所に道を作るほうも凄い。

それが「遊歩道」というのがちと気に入らないが、これが無ければ自分もこの河原を歩けない。

 

しばらく人気の無い遊歩道を進むと、道は突然進路を変える。

この先にある「白丸ダム」の湖岸の高さまで、一気に登り詰めるのだ。

高低差は約30m。ここを非常に急な階段で登っていく。

全体的に楽な遊歩道であったが、ここだけはキツかった。

 

ハイカー達は中高年の方が多く、みな階段をゆっくり登っていった。

私もその流れに加わって階段を登っていくと、後ろを歩いていた小父様と小母様が私に声を掛けてきた。

「ハイキング?」「いえ、多摩川を巡っていまして」

「へー、多摩川」「河口から10kmおきに多摩川を訪れるって事をしてるんです」

「自由研究か何か?」「いえいえ、趣味です」

「へぇーっ。凄いことやってるんだねえ」

ここで自称「多摩川のバイブル」を渡して、「これを見て、いろいろやってるんですよ」

「面白いものがあるのねえ」

そんなやり取りをしていると、直ぐに白丸ダムに到着してしまった。

「じゃあ、どうも」「君も頑張ってねー」

多摩川紀行において、初めての人とのふれあいであった。

 

前回来た時は話に夢中で、景色など良く見ていなかった。(再訪の理由のひとつ)

今回は誰もいないので、じっくりと遊歩道を味わえる(笑)

 

きつい階段を登りきると、写真の広場に出る。

屋根も付いていたりして、なかなか立派な休憩所である。

ただ肝心の展望はというと・・・あまり優れない。

 

広場を過ぎると、遊歩道は穏やかな杉林の中を行く。

急なアップダウンもあまり無く、また木の根などの障害物も少ないので、非常に快適である。

ただこの区間はあっという間で、直ぐに白丸ダムに到着する。

 

白丸ダムである。提高30.3mの重力式コンクリートダムで、脇には魚道が整備されている。

純粋な発電用ダムであり、私が訪れた日は(恐らく観光)放流を行っていた。

多摩川のダムといえば小河内ダムだが、若干地味な存在の白丸ダムも忘れてはならない。

この変色したコンクリートが、いい味を出しているではありませんか(笑)

 

放流を上から見下ろすと、この通り。

ドドドーッという音と共に、物凄い速さで水が流れていた。

なかなか迫力があった・・・というより、若干恐ろしかった。

写真ではあまり分からないかもしれないが、実際はかなりの高度感がある。

 

ダムの上から、下流の方を見てみる。

無論今日みたいな日に観光放流をする筈も無く、ダムは静寂に包まれていた。

左下に見える階段状のものが魚道である。

ここを魚たちが通るのを想像してみると、少し楽しくなった。

 

私はダムマニアでは無いので、直ぐに遊歩道に戻った。

ここから先の区間は、看板が示しているように、かなり険しいところらしい。

 

次回は、ここからダム湖沿いの道を進んでいく。

 

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