2007年夏、私の多摩川紀行は始まった。
その記念すべき第一回である0km地点、つまり河口への訪問は、それはまたなかなかの苦行であった。
気温は30度を超え汗は止まらず、靴擦れで足からは血が滲み、挙句の果てに河口に辿りつけていないという結果。
これでは不味いと、その後私は再訪を企てた。
しかしなんだかんだあって、結局再訪は1年半後の2009年春となってしまった。
ここでは、その再訪の様子をレポートしようと思う。
スタート地点は、神奈川県川崎市にある京浜急行大師線の小島新田駅。
この京急大師線には、4.5kmという距離の割にかなり深い歴史を抱えている。
数十年前までは、南にある塩浜、更に昔は桜本町という所まで線路が続いていたというが、貨物駅建設に伴い廃線になってしまった。
(地元の人の話によると廃線跡は殆ど残っていない…らしい。)
更に、嘗ては脇を通る国鉄の貨物線(川崎貨物駅建設前から、ここに貨物線は存在した)から引込み線で大師線に入り、
川崎大師駅の近くにある味の素の工場まで3線軌条で貨物を通していたという。
この「いつくしま跨線橋」で、JR貨物・神奈川臨海鉄道の川崎貨物駅を跨ぐ。
この橋は、この先の殿町を中心とする地元の人たちの重要な足となっている。
橋はかなりの幅があるが、歩道橋なので勿論車の通行は出来ない。
海風か、はたまた時間の流れかは知らないが、金属製の街頭やフェンスがかなり錆びていた。
橋の外を覗くと、フェンス越しに操車場を臨むことが出来る。
画像にあるトンネルは、東海道本線貨物支線、通称東海道貨物線の「東京港トンネル」である。
このトンネルはここから多摩川を潜り、羽田空港の埋立地を潜り、約6km北上したところで東京貨物ターミナルに出る。
東京の流通を支える、とても重要なトンネルなのである。
こちらは反対側の景色。
こうして見ると、いかにこの川崎貨物駅が巨大であるかが分かる。
遠くには数多もの煙突や石油コンビナート、線路には石油や荷物を積んだ貨車が並んでいた。
まさに「工業地帯」の名にふさわしい景色ではないか!(少し興奮)
遠くから重量感のある音が聞こえてきたと思えば、EF210形電気機関車がやってきた。
岡山に所属しているから、この機関車の通称は「桃太郎」。
鬼をも引っ張ってしまうその体で運んでいたのは、3両の空の貨車であった。
橋を進むと、道は4車線の車通りに突き当たる。
正面にあるのはYAKIN川崎(日本冶金工業グループ)の工場となっており、勿論関係者以外立入禁止だ。
多摩川の河原へは、この交差点を左に進む。
なお右に進むと、前述した塩浜地区に至る。
交差点を左に曲がり、国道410号線へと向かう。
脇はずっと工場。休日の為か、工場から音は聞こえなかった。
一方車道は引っ切り無しにトラックが通っていた。
首都圏の大動脈となっている首都高速道路。
その複雑すぎる路線図もやはり凄いが、個人的にもっと凄いと思うのが、
湾岸線に存在する「川崎浮島JCT」と「大黒JCT」の線形である。
地図を見れば分かると思うが、どうすればこんなに複雑になれるのかというくらい複雑だ。
大黒の方はまだJCT全体の形が円形で「線形美」を感じることが出来るが、浮島はヒドい。
さて、ここで道は踏切を渡る。
先程の川崎貨物駅から延びている、神奈川臨海鉄道浮島線である。
浮島線は全長3.9kmで、非電化単線の貨物線である。
この先には末広町・浮島町駅があり、現在も貨物輸送が活発に行われている。
なお今回は、ここを走る貨物列車を見ることは出来なかった。
浮島JCTから延びる首都高神奈川6号川崎線は、ここから東に進んだ殿町インターから西が未開通となっている。
将来は首都高横羽線へ繋がる予定だが、今はまだこの上から車の走行音は聞こえない。
この「殿町3丁目」交差点で道は急に狭くなるが、ここは直進だ。
これは余談だが、前回の訪問では、写真のFamilyMartのお世話になった。
交差点より、国道410号を臨む。
この道を真っ直ぐ行けばやがて浮島に至るが、国道はそこで途切れてしまう。
再び無料で走れる国道410号線が復活するのは、東京湾を越えた千葉県木更津市からだ。
臨港バス・川崎市バスの「大師河原」バス停だ。
川崎駅と浮島を結ぶバス路線で、大企業の工場がある為か、本数はなかなか多い。
バスで河口に行く場合は、ここで降りるのが良いだろう。
殿町3丁目の交差点を直進すると、住宅街の道となる。
周辺を工場に囲まれてはいるが、至って普通の住宅街だ。
ここを300m程進むと、多摩川の河原に突き当たる。
右側にまだ進めそうな道があったので、曲がってみる。
正面は車置き場なのだろうか、だだっ広い広場となっている。
いよいよ河原に到着。
今日は前回みたいに暑くも無く、靴擦れも無く、とても快適な状態での散策となった。
ここから河原のサイクリングロードへ登る。
約2kmで、前回辿りつけなかった多摩川の河口だ。