原生林茂る、甲武の深山 飛龍山(2077m)(7) 2009.03.25-26
なんだかんだ云って、飛龍山のレポートが7回目まで来てしまった。
いやはや、僅か2日間の山行でこんなに延びるとは自分でも予想していなかった。
今回で下山。ようやく下山である。
今までこんなグダグダなレポートを読んでくださり、本当にありがとうございました…。
…いいえ。まだ最終回ではありません。
絶景の禿岩での昼食を終えて、いよいよ我々は帰路の途についた。
今回下っていくのは、「ミサカ尾根」と呼ばれる飛龍山から南に延びる尾根である。
飛龍権現の十字路を「サヲウラ峠(サオラ峠)」の方へ進むと、尾根道が始まる。
出だしはこのように普通の尾根道である。
所々道が凍っており、アイゼンなしでは…少し辛いものがありそうだ。
振り返ると、そこには飛龍山が。
当分はこの山に再び登ることはないだろう。
ひょっとしたら、もうこの山には二度と登らないかもしれない。
さいなら、飛龍山。
ご覧のとおり、進むにつれて道の傾斜がきつくなって来た。
積雪は5cm程で、アイゼンで歩くと時々アイゼンに土の塊がくっついて来た。
こういうところでは外した方が歩きやすいのだろうけど、依然として凍っているところが多くあるため外せない。
禿岩に居たときからそうであったが、段々と風が強くなってきた。
それは、南西方向から吹いていた。が、標高2000mにおける極寒の南西風であった。
風が無ければ寧ろ暖かささえ感じていたのに、風が吹くと急に体感温度が下がり始めた。
歩いてもちっとも暖かくならないし、挙句の果てには鼻水が凍り始めた。
…本気で寒かった。
寒さを堪えながら進んでいくと、急に前方の視界が開けた。
これから、手前の尾根を進んでいくになる。
まだまだ雪が残っているようだが…。
(メンバーが写っておりましたので、編集させてもらいました)
前方が開けたと言うことは、即ち急な下りになること。
…という訳で、ここから岩が露出するハードな道になった。
アイゼンが岩をかまないように工夫しながら下らないといけない為、なかなか辛かった。
午後1時少し前、我々はようやくミサカ尾根一つ目のチェックポイント「前飛龍」に到着した。
ここは尾根上の小さな平地となっており、巨大な岩が存在した。
確かに眺めもいいし(勿論禿岩には劣るが)、良い休憩地点にはなるだろう。
前飛龍を過ぎてもなお、急な下りは続いた。
写真のような「もうアイゼンいらんやろー」な場所と、「ここはアイゼンなしではきついなー」という場所が、
交互にやってきて、アイゼンを外したくても外すことが出来なかった。
特に途中、高さ3m程の氷の壁が現れたときはかなりビビッタ。
急坂の道に積もった雪が、北側斜面だった為に融けずにそのまま氷となった為、本当に氷の壁のようだった。
…初めて、本気でアイゼンが必要な箇所だと思った。
さて、そんな訳の分からんゾーンもようやく終わりに差し掛かってきた。
道の傾斜もゆるくなり、所々路上に残る雪も明日には融けて無くなっていそうなほど少なくなっていた。
我々は、ここにきて漸くアイゼンを外したのである。
アイゼンにくっついていた土の塊が、20cmほどの大きさになっていたことに驚いた。
アイゼンが無いと、こんなにも歩きやすかったのか。そのくらい足が軽かった。
いくつか緩いアップダウンを繰り返し、第2のチェックポイント「熊倉山(火打岩)」に到着した。
火打岩というくらいなのだから、きっとこの辺りにある石をぶつけたら火花が散る…訳ないか?
…それにしても、当初は午後1時過ぎには丹波のバス停に到着している筈が、午後2時を過ぎてもいまだ「サオラ峠」にすら辿りつけていない。
本来は13時40分発のバスに乗る予定が、これではその次の15時40分のバスに乗ることも怪しくなってきた。
その15時40分の次は…18時50分。終バス。
3時間は待ちたくない。
我々は休憩することもせず、そそくさと熊倉山を後にした。
ここからサオラ峠までの区間は、本当に気持ちが良かった。
尾根は広く、登山道はまるで陽だまりの散歩道のようであった。
今までの2日間の締めに相応しい、本当に良い道だった。
広い尾根であるが故、はっきりとした踏み跡が無い箇所もあった。
が、それでも尾根伝いに行けば良いことは分かっていたので、どんどん進んでいく。
落ち葉の音が幾重にも重なって山に鳴り響く。
本当に、今までの苦労が報われるやうだー。
それでもやはり、2日間の疲れは相当なもので、登りが来るたびに息が切れた。
写真にある前方の高みが見えたときは、またあれを登るのかとウンザリした。
が、サオラ峠はその高みの手前に存在してくれた。
熊倉山から凡そ30分。最後のチェックポイントとなる「サオラ峠」に到着した。
そこは峠というより、尾根上のでっかい平地であった。
因みにこの「サオラ峠」、漢字で「竿裏峠」と書く場合や「サヲウラ峠」「サヲラ峠」「サヨラ峠」…などと書かれることがあり、
正式名称がはっきりしない。因みに標識類はみな「サヲウラ峠」だった。
個人的には、「オ」を「ヲ」とするところから「鉄道ヲタク」というフレーズが連想されてしまう。
私だけだろう、きっと。
これはサオラ峠から北へ、今日の出発点「三条の湯」へと向かう道である。
こことの標高差は約300mというから、それほど急な道ではないらしい。
…まあそれでも尾根の北側を行く道だから、やはり雪くらいは有るのだろう。
真っ直ぐ行くと、今までのように尾根(ここから先は「ミサカ尾根」ではなく、「天平尾根」という名前になる)を伝って高度を下げて行き、
最後は後山林道の起点「お祭」の近くにある「親川」という地点に出る。
左は三条の湯へと向かう道。
そして右へ下っている道が「丹波」へと向かう道、即ちこれから進んでいく道である。
このように十字路となっているサオラ峠、我々はここで15分ほど休憩をした。