原生林茂る、甲武の深山

飛龍山(2077m)(最終回)

2009.03.25-26

 

 長いようで長かった2日間。

 ようやく、我々は人里にたどり着くことが出来た。

 だが、しかし…。

 …やっとこさ最終回です。

 

最後のチェックポイントであるサオラ峠を出発した我々は、丹波へと下る登山道へと進んだ。

ご覧のとおりかなり急峻な地形であることが窺える。更に、植生している木も皆細く頼りない。

更に更に、あまり交通量も多くないらしく、一部では道が崩れかけていた。

…アイゼンを外して歩きやすくなったとはいえ、このような道はやはり怖い…。

 

道は電光型のヘアピンカーブを、何度も何度も何度も繰り返して標高を下げていく。

途中、道が不明瞭なところが存在するが、そのような所には一応ビニールテープが木に掛けられていた。

僅か3km程で標高差約800mを下っていくのだから、必然的に道は急になる。

朝から頑張って作ってきた位置エネルギーが、どんどんと消費されていく。さらに体力をも消費していく。

サオラ峠から丹波の集落までの間は、断続的に転げ落ちるような急坂が続いた。

しかも落ち葉が深く堆積しており(20cm位)、ただでさえ歩きにくい道を更に歩きにくくしていたのである。

 

喘ぎ喘ぎ下っていると、遂に下界が、丹波の集落が見えた。

まだ標高差は500m以上。木々が落葉している冬だけの景色であろう。

私はこの景色を見たとき、いよいよ帰れる!と、思っていた。

…だが結局、下っても下ってもなかなか家々の屋根が近づくことは無かった。

 

落ち葉に辟易しながら歩いていると、道の前方が暗くなっていた。

ついに、落葉樹林から常緑針葉樹林、つまり植林帯に入ったのである。

大抵は、植林帯は比較的標高の低いところにしか存在しない。つまり我々は大分下ってきたことになる。

いよいよか?やっと終わるのか?

 

…と思っていたが、植林帯に入ってもなかなか出ることは出来なかった。

勿論落ち葉が無い分歩きやすいのだが、…まだかまだかという気持ちになった。

 

漸く、案内板のある場所に到着した。この辺りは山王沢と云うらしい。

ここはT字路になっており、サオラ峠から下ってきて左へ進むと「丹  波」、右へ進むと「山  道」となっている。

まあ、右に進んでも結局は丹波の集落に出そうな感じではあったが。

 

山王沢の案内板を過ぎると、急に道が荒れ始める。

まあこのような植林帯の登山道ではありがちだが、道が雨水等によって深く掘れている場所もあった。

しかしもう一息、あと少しで憧れの「自動販売機」にありつける…!

 

植林帯の中を歩いていくと、左手に小さなダムらしきものがある所で道が二つに分かれているところがある。

ここは左へと進み、小さなダム(?)の上を越えて対岸へ行くのが正解。真っ直ぐ行っても行けないことは無さそうだが…分からない。

この両岸をコンクリートで固められた沢が、山王沢なのであろうか。

 

帰ってキタでー!人里に!!

右手に、タイヤで出来た塀のようなものが現れた。

そこはもう山中ではなく、丹波の集落の中である。

 

右手の集落を見下ろしつつ歩いていくと、やがてゲートが現れた。

これを以って、長い長い登山道は終わった。

 

あとは、集落内の舗装路を国道へと進んで行くだけである。

そして…遂に。

 

西東京バス奥10系統終点、丹波バス停。今回の最終目的地、到着。

とりあえず我々は荷物を置き、自動販売機へと向かい(写真にある変な機械は空き缶回収機である。使えるのか?)、缶を3本空っぽにした。

…さて現在時刻は?時計を確認してみると、

 

1614分。結局間に合わず。

そして我々は、タクシーを呼ぶという半分反則技を使おうとした。

が、奥多摩駅にあるタクシーが1台しかおらず、結局タクシーも使えなかった…。

つか、ガイドマップにはサオラ峠〜丹波バス停1時間とあったぞ。

雪も無かったのに、結構急いだのに1時間半掛かったぞ…。

…仕方が無い。近くにある日帰り温泉の「のめこい湯」にでも入って終バスを待つか…。

 

うあー!!休館だーッ!!

更に村内の飲食施設もみんな定休日だーッ!!!

少し前、トップページのコメントに「丹波山村は木曜日が定休日です」みたいな事を書いたが、それはまさにこのこと。

さて、どうしてくれる。あと2時間以上何処にいればいいのか…。

 

結局、我々は駐在所で休んでおりました。

何とやさしいお巡りさんが、途方に暮れている(この表現ピッタリ)我々に「駐在所で休んでもいい」と言ってくださったのです。

…なんと有り難い。いままであまり警察が好きではなかったのに、好きになってしまいそうだ…。

それでも、落し物を届けてきた人が駐在所に来て休む我々を見て、互いに気まずくなったのは言うまでもないのですが。

 

何か面白いものは無いか、丹波山村の観光名所は…と案内板を見ていると、「ローラー滑り台」なるものを発見した。

面白そうだなと、駐在所を抜け出し(というより駐在所は定員オーバーだった)滑り台の入口まで行ってみると…

金取られるじゃないかー(しかも高い)!それにもう閉まってるー!!

 

結局、約2時間もの間、我々は悶々とした時間を駐在所の中で送っていたのであった。

丹波駐在所のお巡りさん。本当に、有り難うございました…。

 

午後640分。辺りはもう真っ暗で、人影も無い。

何となくスローシャッターを利用してこんな写真を撮ってみた。意外と上手くいくものだ。

バスは本来来るはずの50分になっても来なかった。

おいおい、どうしたことかと我々が心配になってきた頃、バスが5分遅れでやってきた。

 

乗客は我々のグループだけ。結局最後までノンストップだった。

奥多摩駅からの青梅線も、車内はガラガラだった。

こうして、我々の長ーーーい山行は終わったのである。

 

「夏のコースタイム」で計画組むなよな、俺。マジで馬鹿だ。反省しています。(終)

 

チェックポイント

到着時刻

お祭バス停

1319出発

塩沢橋

1435

後山林道終点

1533

三条の湯

1600

621出発

カンバ沢渡渉地点

733

北天のタル

905

飛龍権現

1010

飛龍山頂

1040

禿岩

1129

前飛龍

1248

熊倉山

1409

サオラ峠

1436

丹波バス停

1614

 

其の7

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