原生林茂る、甲武の深山

飛龍山(2077m)3

2009.03.25-26

 

 後山林道、長すぎる。林道のレポートだけで2回も使ってしまった。

 本当はこのレポートを全3回にする筈だったのに、全5回位にまで延びてしまいそうだ。

 

起点から凡そ7.5km。

正面の山が大分近くなってきた。終点はもう近いだろう。

それにしても、標高もそろそろ1000mを超えた筈なのに雪が無い。

やはり、3月の終わりではもう雪は期待できないのか…。

と、山の上の方に白いものが…。

 

あ…雪だ。

恐らくあれは、昨日あたりに少し降った雪が何とか残っている状態なのだろう。

それでも、雪が現れたことはやはり嬉しかった。

 

…標高1000mでこれだと、標高2000mの山頂はどうなっているのだろう。

 

起点からおよそ8.6km。バス停から歩き始めて2時間強。

林道後山線、終点である。

終点は転回所となっており、ここから先は三条の湯へ向かう登山道しかない。

この100m程手前に、車が数台停まれるスペースがあり、車で来た場合はここに停めることになる。(終点は駐車禁止)

長かった…。

 

さて、今までは車道歩きだったため、さほど疲れることは無かった。

しかしここから三条の湯までの区間は、山道歩きとなる。

どれだけ遠いのかは知らないが、何れにせよ体がフラフラして来た私にとってはかなり辛いものとなるだろう。

まあ、三条の湯までは普通に歩けば30分も掛からない筈だ。

大丈夫。まだ行ける。

 

林道終点から延びる登山道は、「青岩谷橋」で支流の青岩谷を跨ぐ。

そして、後山川…でなく三条沢沿いを行く。

この辺りまで来ると三条沢本流もかなり勾配が厳しくなり、それに沿う登山道も急坂が出てきたりする。

いくつか九十九折も出てきて、いよいよ私自身も厳しくなってきた。

それでもまだこの道は「登山道」にしては比較的勾配が緩く、何とかダウンせずに済んだ。

 

さらに行くと、岩にペンキで「三条の湯 十分」と書かれていた。

あと十分…、もう少しだ。

 

進んでいくと、ついに辺りが雪景色となった。

まあ、ほんの1cm程度の雪が木の枝や土に残っている程度だが。

 

川原に、石垣で組まれた槽らしきものが現れた。明らかに人工物だ。

いよいよか。いよいよ来たか…。

 

「山女魚橋」というつり橋で、三条沢本流を渡る。

ここで上を見てみると・・・。

 

三条の湯だー。

あ゛ーーーー…。やっど着いだ…。

 

道は何回かヘアピンカーブで、建物の高さへと登っていく。

 

三条の湯である。

手前の建物に泊まる部屋があり、その奥が管理棟と食堂、さらにその奥が炊事場とトイレとなっている。

 

早速受付を済ませて、手前の小屋に入った。

小屋の中は一つの大きな畳敷きの部屋となっており、土間には薪ストーブと木製の椅子、座布団があった。

さらに将棋セットに囲碁セットまであり、かなり豪華な部屋であった。

どうやら今晩泊まるのは我々だけのようであり、布団も毛布も使い放題だった。

 

…さあ、早速風呂だ!

 

一番手前の小屋と奥の管理棟の間に通路があり、そこから下ることが出来る。

その途中にも部屋が幾つかあったが、入っていないので詳しくは分からない。

一番下ったところに風呂の小屋がある。

どうやらもう一つ風呂の小屋があるようだが、気づかなかった。

 

…てな訳で、温泉「三条の湯」である。

単純硫黄泉、ph10のアルカリ性の湯だ。温泉の匂い(硫化水素)がする。

源泉はここから三条沢沿いに200mほど遡ったところにあり、そこからパイプでここまで温泉を送っているのだという。

源泉の湯は約10℃(つまり正確には温泉で無く鉱泉…)なので、源泉そのままで入ることは夏以外不可能だろう。

 

シャンプーの類は無く、また使ってもならない。下水の処理施設も無いので当然といえば当然である。

掛け湯をして入ってみると、最初はピリリとするものの直ぐに肌に馴染む。

湯温もおよそ39℃位で丁度良く、一度入ったら出たくなくなるような気持ちよさだ。

…というより、本当に気持ち良過ぎて出られなくなった。

40分ほど浸かった後立ち上がってみると、見事に立ち眩みがおきた。

私の体は、相当ダメージを受けていたようだ。

 

午後6時過ぎ、夕食ということで食堂へ向かう。

山菜の天麩羅や佃煮が並ぶ。ご飯はお替り自由だ。

質素だが、目茶苦茶美味しかった。

 

夕食の後、午後8時頃にもう一度風呂に入ろうと外に出たら、雪がかなり激しく降っていた。

が、風呂から上がる頃にはかなり小降りになっていた。」

 

これが今回泊まった部屋だ。

我々しかいなかったので、とても広々使う事が出来た。

私は痛み止めの薬と葛根湯の粉末を飲み、床に就いた。

午後9時。部屋の明かりが消えた。

 

夢を見た。何の夢だったかは忘れたが、かなり長く眠ったと思った。しかし目を覚まして時計を見てみると、なんとまだ午後10時半。

その後も寝ては起き、寝ては起きを繰り返した。こんなに長い夜は久しぶりだと思った。

午前12時頃に外に出てみると、雪が止んでいた。

その代わりに、怖いぐらい綺麗な星空を見ることが出来た。

 

 

・今回後山林道をレポートするにあたり、「りん」様山梨の林道事典・「後山林道」の項参考にさせていただきました。

 

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